文字起こし技能テスト(R)は、文字起こし、音声起こし、テープ起こし、書き起こしなど、録音された音声を文字化する技能を評価するテストです。
第4回までは「音声起こし技能テスト」第5回から「文字起こし技能テスト」に変更いたしました。

プロの視点

高品質と量を両立させるシステム――株式会社大和速記情報センター

今回は株式会社大和速記情報センター、社長と速記部のお二人にお話を伺いました。

音声を文字化する際の整え方などについては、過去には何冊かの本が出版されていたのですが、現在はいずれの本も入手しにくくなっています。仕事を始めた人が処理に迷ったとき、指針になるものがなかなかありません。
その点、同社は在宅スタッフへの手厚い情報提供が特徴です。

津田健司社長 当社は昭和29年創業、61年の歴史を持つ速記と音声起こしを主力とする情報処理の会社です。私は2代目で、2001年に社長になりました。東京本社のほかに大阪・名古屋・福岡に営業所があります。8月に虎ノ門からこの新橋のオフィスに移転して、新たなスタートを切りました。

――社内スタッフは何名ぐらいですか。

津田 従業員数は約100名、うち70名ほどが速記部です。速記部員の7割が公益社団法人日本速記協会の1~3級を取得しています。
速記部員は現場に行って録音のセッティングをし、速記者席で記録を取ります。録音について、当社は徹底的に研究しています。多人数の会議などでは相当な数のマイクを持参し、録音もメインとサブに加えてもう一つ、トリプルで録ることも普通です。
社員が現場に行けば、万全な録音ができます。資料や発言順の記録なども整えますから、在宅スタッフも仕事がしやすくなります。多いときは1日35件もの録音取材に行きます。それに対応できるキャパシティーが当社の強みです。

――映像配信などの業務もされていますね。

津田 当社のお客さまは官公庁・民間と多岐にわたります。地方議会の会議録については、インターネット上の会議録検索システム議会映像配信システムも提供しています。仕事をしている人にとって、ウイークデーに議会の傍聴に行くということはなかなかできません。これらのシステムなら誰でもアクセスできますから、開かれた議会を実現するお手伝いができていると思います。

――速記や音声起こしの現状や将来を、どのようにご覧になっていますか。

津田 狭義の符号速記の技術については、衆議院・参議院の速記者養成所が廃止され、裁判所のソクタイプによる速記官養成も終わってしまいました。本当に残念なことです。
しかし、インターネットの時代とは、情報公開・情報開示の時代です。符号からではなく録音から書き起こすとしても、「人の話し言葉を文字化する」という、広義の意味での速記は将来にわたって消滅しないと確信しています。

※符号速記→人の話す言葉を聞きながら手書きの記号で記録する技術
※ソクタイプ→速記符号をタイプする専用のタイプライター
 
――在宅スタッフの募集状況について教えていただけますか。

安藤徹 速記部係長 当社のWEBサイト以外に、年に1回、新聞に募集を出しています。新聞に1回掲載すると約100名の応募があり、そのうちの約20名を採用して教育してきました。ところが昨今は、新聞の求人広告だと応募は退職者など年配の方が多い状態になって、長く続けていただきたいという意味では若干ミスマッチが起きています。

――若い世代は、スマホの料金に圧迫されたりして、新聞を取ってないことがありますものね。

安藤 今後は、インターネットでの募集を強化していかなければいけないと思います。
選考は、書類選考・筆記試験・面接です。筆記試験は、漢字や時事問題など。それと音声を少し起こしてもらって、キーボードのブラインドタッチができているかを確認します。選考をクリアされればOKで、経験者に限るといった条件は付けていません。
在宅スタッフ数は、現在約300名です。長い人は20年以上当社で続けています。月に30時間とか、繁忙期になると月40時間起こしてくれる人もいますよ。

大和速記が在宅スタッフに提供しているツールや教育だと、そして本人が優秀で適性があると、精度を維持しつつ量もこなせるようです。私は実際、1日に120分起こせるという同社の在宅スタッフさんとお知り合いになったことがあります。

――(月40時間という驚異のお話を聞いたあとでは、この質問をするのもヤボな感じですが)在宅スタッフにどんな能力を望まれますか。

安藤 一定レベル以上の日本語能力、多様な話題についていける柔軟性や知的好奇心、インターネット検索などの情報収集能力、そして耳の良さを兼ね備えている人ですね。医療や科学などの得意分野を持っている方も歓迎です。
また、反訳以前の問題として、納品時間を守るなど社会人としての常識やコミュニケーション能力は絶対に必要です。

――「耳がいい」人を育成するのは難しいですが…。

安藤 私の同僚は「地あたまがいい」をもじって「地耳がいい」という表現をしています。地の、つまりもともとの素質なのかもしれませんね。

安藤 在宅スタッフには、大和速記スタッフサイトという当社登録スタッフの方専用のサイトを通じ、最初に次のようなツールを提供しています。
(1)ファイル配信システム、(2)大和速記デジタル・トランスクライバーとフットスイッチ、(3)テキストチェッカー、(4)単語登録マニュアル、(5)日本速記協会『標準用字用例辞典』改訂に伴う新旧対照表、(6)反訳のイロハ

――(2)はokosoでも紹介させていただいたことがあります(←2010年の記事でちょっと古いですが)。テキストチェッカーはどんなものですか。

安藤 「大和速記スタッフサイト」に組み込まれていて、案件ごとに、その案件独特の用字や人名の表記などが正しいかをチェックできるシステムです。社内のシステム開発部が制作しています。在宅スタッフ本人が、このチェッカーで確認して仕上げてから納品するという決まりになっています。

――単語登録マニュアルは親指シフト用ですか。

※親指シフト 富士通が開発した独自の入力システム。日本語を最も高速に正確に入力できると言われ、専用のソフトウエアとキーボードを使う。大和速記のベテラン社員は今でも親指シフトで入力しているが、ここ6、7年以内に入社した社員はローマ字入力とのこと。

安藤 親指シフト用でしたが、現在はローマ字入力用に応用したマニュアルも作成しています。(5)は、2010年に常用漢字表が大きく変わったことによって変更された用字をリストアップしたもの。(6)は、マニュアル兼読み物です。言葉の使い分けや、音声のどんな状況ならどう判断して処理するかなどの考え方をまとめています。

――まさに至れり尽くせりですね。話は変わりますが、第1回『音声起こし技能テスト』が近づいてきました。

石橋怜子 速記部主任 私は『音声起こし技能テスト 公式テキスト』と『音声起こし技能テスト 公式問題集』の問題を、全部解いてみました。実際の音声を起こしていてぶつかることが問題に出てきて、解きながら「これはあるある!」とつぶやいてしまいました。

――『音声起こし技能テスト』は新聞表記を基準にしていますが、御社は『標準用字用例辞典』に沿った表記、いわゆる速記表記が基本ですね。

石橋 ええ。でも、新聞表記をきちんと身に付ければ、違う表記にも対応できます。
例えば議会などはその議会ごとに求められる独自表記もあります。複数の表記に柔軟に対応するのは能力のうちですから、試験が新聞表記でも全く問題ないと思っています。

――私は教える仕事もしているのですが、受講者の方は音声5分の起こしに60分もかかったりして、最初は皆さん苦戦されます。

石橋 「聞き打ち」は難しいですものね。音声を聞いて、止めて、その内容をタイピングして、それからまた音声を再生して聞く…という手順では、いくら時間があっても足りません。聞きながら打つという技術を自分の体が覚えるまで、努力するしかないと思います。

――しかも、表記を調べて、用語をネット検索して、仕様を確認して。

石橋 それらが順序立ててテキストや問題集で扱われているので、この内容を前もって勉強しておくと、スムーズに実務に入れる試験だと感じました。『音声起こし技能テスト』の点数を見ればある程度採用の可否が判断できるようになることを、期待しています。

株式会社大和速記情報センター
音声起こし活用推進協議会 会員
津田健司 代表取締役、安藤徹 速記部係長、石橋怜子 速記部主任

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音声起こしポータルサイトokosoより

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